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オフィス.51 HP開設記念対談 医者と患者の新しい関係
(南淵明宏:富家孝)
対談画像1
南淵--「今は医療の質が問われている時代で、患者さんも専門医の質はどうなっているのか、 あるいはメディアも実技試験のない専門医は全然話にならないのではないか、 また専門医の人数に関しても、学会員のほとんどは専門医で、これは誰でも取れるのではないかと言ってますね。

富家--「ええ、皆さん分かってきたようですね。」

南淵--「そうです。よく聞いてみると、医師国家試験に合格して医者になったら、 あとはほとんどフリーパスで言いたい放題、やりたい放題、言った者勝ちの専門医になっていきます。医療分野はどんどん細分化されているとはいいますが、現実には医療は医師が好き放題にやっていて、それに対して医師の質の管理はまったくなされていないというのが現実です。それである意味、最近になって一般社会、メディアから一体どういうことなのかと(疑問を)突きつけられているわけですね。
では、それに対して医者がどのように反応していくかということになります。
個々の医者のレベルでは『何とかしなければいけない』と相当に高い問題意識を持っているのですが、いざ団体という形になってみると、学会や医師会は現実にはそういう活動をやってきてはおりません。
例えば学会では学術交流などの勉強しかやってこなかった、『お勉強』しかしてこなかったのです。手術の上手な人・下手な人がいるという話も全然あがりませんでした。
心臓の手術をするとき―例えば大動脈弁の手術のときには、心臓が停止しますよね。そのときにどんな液にどういう風にグルタミン酸を混ぜれば安全に手術ができるかとか、そういう話ばかりしていました。

しかし、そうではない。
(同じ手術でも)『ある人は3時間かかる、ある人は30分でできる』『30分でできる人はどういう薬を使うかとか、どういう心筋保護液を使うか』そういった話があがらないのです。
学会も右往左往しています。学会員に厳しい試験を課したら、皆試験に落ちてしまう。すると学会員から文句が出てしまう。例えば10万人いる学会でそのうち3000人だけ専門医ということはできない。
自分たちでやったら、かばいあったりする、…。そういう状態だからきちんとした質の管理ができないのです。」

富家--「私は学会も専門医制度も最初から金集めだと思いますよ。」

南淵--「まったくそのとおり。専門医の免許がないと社会から信用されないと不安をあおっているだけ」

富家--「専門医はもともと意味がないと社会はわかってきた。そういう時代がきたわけですね。」

南淵--「そういうときにどうすればよいか。こうなったら医者の方で策がないなら、外部から医者を選別してやろうではないかという動きが今後出てくると思う」

富家--「本当にそのとおりです」

南淵--「その一つの表れがランキング本ですね。
最近の状況では読売・日経・朝日といった大手新聞社が非常に詳しいアンケート調査をしようとしています。
症例数だけではわからないのではないか、じゃあもっと詳しく調べよう、と。
そういうことは心臓外科の学会ではやらないんですよ。
心臓外科の学会が社会から不審な目で見られている状況下なのに、学会としてもっと社会に語りかけようという動きにはなっていません。
どんどん詰め寄られているという現状ではないかと思うのですよ。これは見ていて情けないと思います。
私が情けなく思おうが思うまいが関係なく、時代はそういう流れになってきているわけです。
極端な例ですが、プロ野球選手がバッティングを完全に会得したと言っていても、それは打率とホームランの本数でわかるわけですよね。 小学生でもわかりますよ。あなたはよく打っているとか、あなたは全然駄目だ、チャンスで三振ばかりで何をしているんだとか。そういうふうに、一般の人たちが医者を見極める時代になってきましたね。」

富家--「そうですね。いい時代がきたと思いますよ。
これからは患者が医者をすべて選ぶ時代がはっきりきたと私は言いたいです。
素人の人は『大変な時代が来た』と言っていますが、むしろきちんとしたことが明らかになってきた。
それだけ良かったんだと思いますよ。」

南淵--「そうです。ここで大切なのは一般の人たちの視点で自分のスペック、要するにパソコンに例えるとCPUが何でRAMが何メガで、ハードディスクが何ギガで…という、そういうところを医者も自分の能力やその容量をはっきりと見せられないと駄目なんです。
(富家)先生もおっしゃるように認定医だとかよく分からないような(心臓外科関連の)三学会の専門医だとか、『何なんだそれは』と言いたくなるようなものばかりです。患者さんにとって、もっとわかり易くてなるほどと思えるもの。 それは一つに症例数であるし、また、顔(名前)を出す、ということですよ。 私も顔や名前を出して発言していますが、匿名の批判とかあるんですよ。」


富家--「そうなんですよ。顔を出すと匿名の批判がすごいんですよ。
私なんかも営業妨害するな、と電話が匿名で掛かってきます。
名前を聞いても答えてくれませんしね。
名前を言えないなら文句を言ってくるな、って思います。」

(中略)



南淵--「ところで日本はMRIにしても普及率世界一ですよね。 こんなにお金を使っている割には人にはお金を使っていません。医者の給料は世界的にみて決して安くはありませんが、トップアスリートと呼べるような医師はいません。そのわりに病院は何億という機材を買いますよね。あれは不思議です。
例えば私の家の近くの市民病院の話ですが、循環器疾患の病棟を整備するのに何十億と使って、そのうえで医者を募集するが、誰も来ない。というのは、給料は普通の給料だからです。病棟に30億かかるうちの1億を医者の給料にして残りの29億を病棟に使えば日本一の医師が来ますよ。年俸1億となるとみんな応募してきますし。」


富家--「あたりまえな話ですが、そのくらいの話があってもいいのですよ。
やはり日本の医療制度にはまだまだ様々な問題がありますね。」

 2005年冬 大和成和病院にて収録
 
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